公益財団法人 横浜勤労者福祉協会 理事長 窪倉 孝道
新年おめでとうございます。昨年末には衆議院の解散があり、自公・安倍政権が行ってきた2年間の政治の中味について国民の信を問う形で総選挙が行われました。その結果は、国民の立場に立った政治の実現を目指す革新政党の大きな躍進があり、沖縄では4選挙区で辺野古基地反対派議員が当選するというような民意の表出の一方で、小選挙区制のからくりで、全有権者数の25%程度の低得票率で自民党が61%の議席を、自公政権としては3分の2以上の議席を制するような結果にもなりました。有権者の半数が棄権する中で、投票者の半数を獲得したからと言って、アベノミクスが信任された、この道しかないと独断するとしたら為政者としてあまりにも傲慢で軽薄、安倍内閣の暴走はこれからも続くと見なくてはならないでしょう。つまり、消費税増税と社会保障の一体的改悪、集団的自衛権行使容認やTPP参加、原発再稼働問題、社会的格差の進行など、命や生活を取り巻く環境が脅かされてゆく厳しい事態は今後も続く可能性があるということです。
さて、私たちの法人運営に目を向けると、全役職員の奮闘で今期の医療経営活動は今のところ概ね順調に推移しており、何よりも2010年代の法人の行動指針となる第5次長期計画を理事会で決定することができたことが大きな成果で、現在法人各事業所で職員への周知と具体化が検討されているところと思います。その長期計画の肝は、「少子高齢化が急速に進む将来を念頭に、地域に深く根を張った親切で良い医療・良い介護活動を進め、内外事業所との新しい時代にふさわしいネットワークの構築をこれまで以上に多彩に、強めながら、誰もが安心して利用できる地域包括ケアの実現に関わってゆこう」というものです。しかし、この選挙後の情勢を考えれば、そうした私たちの活動は簡単ではなく、行く先々で、今まで以上に政治の矛盾、時代の困難に苦しむ患者・利用者とのかかわりを生むことになるでしょう。私たちは、これまでの民医連運動の実践により、親切で良い医療・良い介護の実現は、良い社会や良い政治の実現をなしには困難であることを知っています。そして、国の平和原則や基本的人権を大切にする憲法の精神がくらしに生かされてこそ、はじめて医療と介護が生きることも知っています。
今年、私たちの法人は60周年を祝ったところですが、日本国にとっての来年は終戦後70周年に当たります。終戦を敗戦として直視し、受け止められなかったことに戦後日本の根源的問題があるとする指摘がありますが、いずれにせよあの大きな戦争の犠牲の上に作り上げられた現行憲法、そしてその下での平和な歳月において発展してきた医療・福祉・介護の制度を私たちもしっかりと守り引き継ぎながら、よりよく発展させてゆくために、新しい長期計画の下で横浜鶴見の地域で果たすべき私たちの役割をしっかり具体化してゆきたいと思います。
私たち横福グループのビジョンは「無料低額診療事業所として、医療福祉介護にわたる総合サービスを提供し、共同組織とともに地域の患者・利用者の生活を支える」です。これは、まさにこれから予想される一層困難な時代状況の中で、「あるべき地域包括ケア、無差別平等の地域包括ケア」を実現するにぴったりのビジョンなのです。これを横福協職員の確信とし、今後の飛躍の礎にしたいと思います。今年もよろしくお願いします。