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5月理事会 理事長あいさつ

2017.6.03

ゴールデンウィーク中の憲法記念日以来、様々な出来事が続いていますが、2、3の話題を取り上げておきます。

先ず一つ目は、読売新聞へのインタビューや改憲派集会へのメッセージで、「東京五輪がある2020年に自衛隊の存在を明記した改憲を施行する」と安倍晋三首相が表明したことです。憲法改正を発議する権限は国会にあり、行政府の長たる首相には憲法を尊重し擁護する義務があるにも関わらず、国会の憲法審査会の頭ごなしに首相が改憲項目やその時期を指定するなど、まさに越権行為でありそれこそ憲法原則の無視であることを安倍首相は全く理解できないようです。また、高等教育の無償化を憲法にうたうことを持ち出したり、一方で、国会で改憲発言の意図を問われて読売新聞を熟読しろと言って説明責任を果たさなかったり、手前勝手とご都合主義で、国民の意見が二分されている「9条改憲」にひたすら前のめりな姿勢が露骨に見えてきました。

もう一つの話題は、つい先週から今週にかけての「共謀罪」の衆議院での強行採決です。「心の中を裁く法律」ではないかと少なくない人が懸念を示し、また法案の中身をよく知らないという人もなお多くいるとされる状況下で、なおさらに本質に迫る議論が十分されたと言えない状況のままでの強行採決は、原発再稼働、沖縄辺野古沖の新基地建設問題、安保法制、憲法問題などと同様、民意を置き去りにした政権与党の強引な国会・国政運営を象徴しています。安倍政権の下では民主的な議論を尽くすシステムがもうまともに機能し得ない状況になっていると考えざるを得ません。「たくさんの人間を一時的に欺くことはできるし、少しの人間を長く欺くこともできる。しかし、たくさんの人を長く欺くことはできない」とリンカーンは言ったそうですが、安倍政権に歴史の審判が下るのはあと何年後になるのでしょうか。翻って、海の向こうのアメリカでは、トランプ政権をめぐる「ロシア疑惑」に独立した立場で捜査する「特別捜査官」のメスが入ることになったようです。トップの「ご意向」がまかり通ったり、部下たちが「忖度」したりすることなく真相究明のシステムが力強く機能する様子に彼我の差の大きさを感じます。これが民主主義の成熟度の違いなのかもしれませんが、日本人一人一人の熟慮と政治的成長が今ほど求められている時はありません。