先週には数日の小春日和がありましたが、季節は確実に進んで既に晩秋です。新型コロナウイルスの感染拡大「第3波」が広がる中、医療界では病床のひっ迫や施設内感染の懸念が高まっていますが、20日にあった政府の感染症対策分科会の提言をようやく政府が受けいれ、21日に遅まきながらGOTOトラベルの見直しを表明しました。しかし、既に3連休の人の移動は始まっており、具体的な施策はこれからなので、車は急に止まらないのと同じで、感染拡大にいつブレーキがかかるか、大変気になります。
政府はGOTOトラベルが感染拡大に関連したことを公式には認めていませんが、そもそも旅行を「勧奨する」ということは人の行動範囲を広げ、接触機会を増やすのは自明なことです。そのため、感染制御を目指す観点から言えば、「旅行の勧奨」自体、本来は感染制御と逆方向の施策です。良く解釈しても、観光業や経済の振興のために「移動をしながらでも感染予防を徹底する」という大変困難な命題に政府が国民を駆り立てたのが今回のGOTOトラベル事業であったと思います。お蔭で「人の動きそのものは感染拡大の主要因とはならない」のではと、間違った認識を広げていないか。感染拡大の結果を受け止める側の私たち、患者・利用者の命を守ろうと必死で手を尽くしている医療介護従事者の努力に逆行するものではないか、納得しがたいところがあります。私たちの多くは、職業意識から既に自らの生活を自制的に送っていたり、送らざるを得ない状況にいますので、感染拡大の中でも「感染予防を徹底しながら旅行しろ」などという政府の事業は理不尽な政策としか言いようがありません。感染拡大中の今、「新型コロナを正しく恐れる」ことが必要なのは、まさに政治の側です。
さて政治と言えば、世界の注目を集めたアメリカの大統領選挙で、自国第一主義を唱えたトランプ氏が退場し、バイデンが当選を確実にしたことが大きな出来事としてありました。アメリカ大統領交代の意義や影響については置くとして、私はバイデン氏や副大統領になるハリスさんの勝利演説の内容や格調、真摯な思いに大きな感慨がありました。特に女性副大統領候補のハリスさんは「民主主義は状態ではなく行動である・・・皆さんは希望、結束、品位、科学への信頼、真実を選んだ・・・・今夜、(アメリカが)可能性に満ち溢れた国だということを、すべての少女たちが目の当たりにした」などと述べました。我が国首相の会見や演説の中にある言葉の中身とひき比べての感想ですが、人間の言葉にも「貧富の格差」というものが厳然としてあるのだなと、つくづくと思った次第です。