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2月理事会 理事会あいさつ

2021.3.19

自粛生活が長くなるといろいろな側面で弊害が出てきます。心身のフレイル(虚弱化)が高齢者に出現していることが話題になっていますが、家族との面会や会話が控えられ、社会参加や交流機会も奪われて孤立化する人が増えており、高齢者だけでなく、若い世代・大学生などでも心を病む人が少なくないそうで、コロナ禍はとても根深い社会問題です。

年末から年明けにかけての新型コロナウイルス感染症の感染拡大と病床ひっ迫もようやく山場を越え、目下の関心事は、ワクチン接種問題です。新型コロナとの戦いを終息に向ける大きな要因は、ワクチンか特効薬の開発です。今回、新型コロナウイルスの感染力に関係する蛋白質の遺伝子情報を利用した新しいワクチンが開発され、すでにいくつかの国で接種が開始されています。日本でも今月17日から国立病院などで先行実施が始まっていますが、この事業は、新技術で開発されたワクチンを、短期間で国民の多くに、全額国の負担で接種するという前例のない国家プロジェクトになっています。

医療従事者に続き、高齢者への接種がスタートします。3週間の間隔をあけて1人2回の接種を済ませるには、ワクチンの搬送から始まって、接種場所や人の確保、安全の確保、健康被害対策、そのためのデータ収集など、数多くの難題がありますが、このワクチン接種に係るもう一つの大きな問題は、どれだけ多くの人に接種ができるかです。新しいワクチンには長期的な予防効果や副反応について得られている情報に限りがある一方で、感染症発症に関して予想以上の予防効果があると認められ、特例承認されました。国全体での集団免疫獲得には70%以上の国民が免疫を持たねばならないといわれていますので、新型コロナウイルスの早期克服には国民の大多数がワクチン接種を受けなければならない状況があります。

こうした状況下で、大きな役割を担うのは新型コロナ対応の最前線を担う私たち医療従事者の動向、接種率です。ワクチンに対する今現在の正しい知識を元に、高い接種率を実現できれば院内感染防止にも役立つばかりか、患者・利用者・国民の接種率向上にも貢献できます。新型コロナウイルス感染症をできるだけ早く制御することが経済再生の近道です。そのことを国や自治体のリーダーがしっかりとしたビジョンを持って説明し、国民にワクチン接種を呼びかけ条件整備に傾注すべきですが、今は緊急事態宣言の解除に前のめりのようにみえます。感染拡大の再燃にならねばよいがと思いますが、さらにオリンピックの開催問題が絡んでいますので、科学的で現実的な判断、今こそ総合的で俯瞰的な政治判断が必要な時です。注視してゆきましょう。