遠い欧州での出来事ではありますが、ロシアによるウクライナへの軍事進攻について話題にせざるを得ません。すでに1か月が経ちますが、ロシアの行動は国の主権を犯す明白な侵略で、70数年前に日本が太平洋戦争で犯した愚かな行為の再現のようで残念に思うだけでなく、第2次世界大戦後の世界秩序を根底から揺るがすという意味で大変心配です。冷戦前後からの複雑な政治的・軍事的・歴史的背景があるのでしょうが、ロシアは国連の常任理事国であり、世界最大級の核武装国でもあり、その大国が公然と国際法を犯した影響は甚大です。
この不幸な事態を何とかするために、すでに様々な次元で、たくさんの国や組織や人々が戦争反対の声を上げ、いろいろな活動をしていますが、自分たちには何ができるかを考えながら毎日を過ごしている人も少なくないことでしょう。いま、ウクライナの地で起きている戦争はよそ事ではなく、戦火の下で国外避難を余儀なくされたり、地下壕に逃げるしかない幼い子供を含むたくさんの人々の一人に自分もなるかもしれないという想像や共感がまずは必要だなと思います。だから恥ずかしげもなく戦争反対と言える空気を大事にしながら、「そんなことしてどうなる」という冷笑主義や惨事便乗型の権威主義や軍事増強の動きには批判を忘れないようにしたいと思います。
もう一つ心配なことは、現代の情報技術の進歩で、ウクライナでの悲惨な映像や音声が子供たちの目や耳や心に焼き付けられつつあることで、ロシアの軍事侵攻は隠し切れない事実として子供の世界にも侵入していることです。このことについて、平和や国際教育の専門家が言っていたのは、こうした理不尽で恐ろしく、子供の理解を超えるような事態を、子供の思考と生き方の文脈に即してとらえ直し、どう向かい合えば勇気を出して生きてゆけるか、大人の指導や援助が大切だということでした。孫や子供を持つ大人にとっては切実な課題だと思いますが、一方でこうしたプロセス、言い換えればウクライナ問題の「意識化」は我々大人にとっても大事なことであって、ウクライナでの出来事をどう受け止めて、今の政治社会のあり方や現状に対処したらよいのか、世界の大人が今こそ考えるべき課題だと思います。
最近の日本では、議会制民主主義があまりうまく機能していないからという理由で、権威主義の仕組みに心を惹かれる人が増えているという指摘があります。最近の選挙結果にもそうした一面が表れていると思いますが、プーチン氏のような人物が出てこないように、ロシアを反面教師に、日本社会でも注意が必要です。