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10月理事会 理事長あいさつ

2024.1.05

 去る10月9日より13日まで、北海道民医連の勤医協中央病院に医療支援で出向いてまいりました。常勤の精神科医師が急きょ不在となったため、全日本民医連の精神科医師たちが交替で支援に入っているものです。

 実質3.5日の活動でしたが、感ずるところが大いにあったので、皆様に報告し共有させていただきます。勤医協中央病院は、北海道内トップの救急車受け入れ台数を誇っています。血液内科、呼吸器外科、心臓血管外科、放射線治療科など最先端の診療を行う一方で、ホスピスを有し緩和ケアにも積極的に取り組んでおられ、全国の民医連でも最大規模の病院です。多くの医師・看護師・事務の皆さんと共同で診療に従事しましたが、彼らの持つ「民医連マインド」に感服した事例がありました。

 50歳代の男性、前月に刑務所出所し、支援付きアパートで生活していましたが。焼酎、酎ハイを多量に飲まれていました。寝たきりになり痩せ、褥瘡を伴う状態となり尿閉・腹痛で救急搬送され入院となりました。入院前の刑務所での処方内容、数年前の精神科病院入院記録から精神遅滞とアルコール依存症と判断されています。これまでに関わった医師たちにより処方が整理され、私が訪問した際はアルコール離脱症状もなく落ち着かれていました。しかし、買い物などの要望に対して看護師が直ちに応えられないとイライラして大声を出す、という状況が続いていました。

 依頼を受けた私は、この方に再度精神科の薬を追加処方するか、それが無効なら精神科病院への転院を検討しようかと考えたのですが病棟看護師の相談は全く異なるものでした。

「この方が身体の医療が必要な状態がまだ続いていることは分かっています。この状況では他に受けてくれる病院もなく、私たちが看護を続けてゆきたいと思います。でも救急患者さんのケアをしながらこの方の要望を直ちにかなえることができません。その時に大きな声を出されるとわたし達も『怖い』という思いが出てきます。そのことを彼が落ち着いているときに率直にお伝えしてもよいものでしょうか」

 病棟看護師の、まさに民医連看護そのものと言える訴えに、場当たり的な対応策を考えていた私は深く恥じ入った次第です。そしてご本人に「あなたが大きな声を出したときは、看護師はケアを中断しいったんお部屋から離れて、ご気分が落ち着いてから支援を再開します」ということを伝えてみよう、との結論に至りました。先進的医療機関の役割を担いつつ「地域の最後のとりで」としての民医連医療・看護を追及している北海道の仲間たちに励まされた体験でした。私を札幌に送り出してくれた横福協の皆さんに、心からの感謝をこめての報告とさせていただきます。