公益財団法人横浜勤労者福祉協会 理事長 窪倉孝道
新年あけましておめでとうございます。2013年度の医療経営活動は継続していますが、2014年度には医療・介護分野に関わる大きな問題が控えており、その対応を踏まえた次年度方針を検討する時期になりました。今年の4月には消費税の8%への引き上げが決まっています。また、消費税増税と一体で社会保障制度を見直すスケジュールを示した「社会保障改革プログラム法案」が衆議院で可決され、医療・介護などへのアクセスのハードルがあげられようとしています。さらには、TPP交渉の動向や国家戦略特区での規制緩和の動きも予断を許さず、医療・介護への影響は深刻化しつつある状況といえます。
民医連としては消費増税には明確に反対してきましたが、医療関係団体は社会保障の充実に充てられ、医療機関の消費税負担の問題が解決されることを前提として、消費税増税やむなしとしてきた経緯があります。しかし、もしもその抜本的解決がないままに消費税が10%まで引き上げられれば、少なからぬ医療機関が経営破綻をきたすのは明らかで、患者負担の増加と自助自立の推進、TPP交渉結果としての医療の市場化推進なども加わり、国民皆保険制度の堅持も困難となることが危惧されます。
また、消費税が社会保障目的税化すると、一見ありがたいように見えながら、高齢化の進行とともに早晩に高い消費税を我慢するか、低い社会保障で我慢するか、あるいは中負担・中保障をよしとするのか、国民としての選択が迫られることになります。しかし、今回成立した社会保障改革プログラム法案では、消費税の社会保障目的税化の規定が弱まる一方で、給付の重点化や制度運営の効率化などでの費用削減の方向性が強まっています。そして、「社会保障からの国民の自立の推進が国の責務」と位置付けるこの法案が成立したことは、「国は社会保障の向上及び増進に努めなければならない」と憲法が定めた社会保障理念の実質的転換が起き、経済の実力に見合った社会保障制度への再構築が始まったことを意味します。
有病率や死亡率が高くなる高齢化が本格的に進行するこれからの時代に、社会保障、特に医療へのハードルをより高くして過度の自立・自助を求めることは合理的なこととは思えません。医療機関は増税や損税拡大によって影響を受けて地域医療体制が弱体化し、患者は負担増加で医療へのアクセスが阻害されて国民皆保険制度自体が形骸化することにもなるでしょう。
私たち医療従事者は、日々親切でよい医療を行いながら医療機関の経営を守っていかなければなりませんが、国政という大きな枠組みの中での国民医療をより良い形で守るためにも、さまざまな活動を通して、地域・行政を含む関係団体・社会に働きかけてゆかなければならない状況になっていると思います。
創立60周年を迎えた組織として、次世代にも永続する組織体にグレードアップできるように、今年も1年頑張りましょう。