医療と消費税 改めて税と社会保障の一体改革を考える
来年度の診療報酬と介護報酬の同時改定作業が進行途上であり、国家レベルでは次年度の国家予算編成が進む中で、社会保障制度の在り方への関心が一層高まる季節を迎えています。第7次医療法の下での神奈川の地域医療構想と保健医療計画、高齢者福祉計画を実現するためにも背景にある社会保障制度の充実が不可欠です。
医療と介護の姿は、社会保障と税の一体改革の方針の下で、社会保障改革プログラム法案や医療介護総合確保法案に定められた行程と内容に従って具体的な姿を現しつつあります。そのキーワードの一つは「持続可能な社会保障」です。今回の集会では、現時点での国の財政構造や景気動向、日本の労働形態変化、家計貯蓄率推移、格差と貧困の指標などから「社会保障と税の一体改革」とそこから始まる社会保障の将来について、固定概念に縛られずに考えてみます。
「社会保障と税の一体改革」に係る政府の広報は、「国民皆保険から半世紀が過ぎ、少子高齢化が進行し、歳出に占める社会保障給付費が増加し、歳入に占める公債が増加しているとし、財政規模の国際比較では、日本では社会保障支出が多い割には租税収入が低く、国民負担率も低い傾向にある」こと等を示しています。そして、消費税は、景気や人口構成に影響を受けにくく、高い財源調達力を持つとし、高齢化の進行とともに引きあがる社会保障費をあがなう財源として消費税の社会保障目的税化が図られました。
しかしながら、社会保障制度を取り囲む国以外のステークホルダーには、受益者たる国民と、同じく社会保険料や法人税等を納めて制度を支える企業、そしてサービス提供側が存在します。この中間二者の状況をマクロ経済学的に概観してみると、企業が国に支払う法人税収総額は景気や減税の影響で伸びが低く、また社会保険料の事業主負担割合も低めとされています。その一方で、最近の企業の内部留保は増加傾向にあります。国民の側は「働き方」の変化により非正規社員拡大の波を受け、民間の平均賃金や家計貯蓄率は下降停滞し、貧困ラインは相変わらず低く、格差指標のジニ係数は所得再配分後も高めに推移しています。医療サービス提供側の実態を、直近の厚労省の経済実態調査に基づいて俯瞰すると、病院経営は赤字を拡大して△4.2%の利益率と報道され、その背景には人件費増加だけでなく、消費税負担の大きいことも関与していることが当協会の調査でも推測されます。
社会保障制度の改革は消費税の社会保障目的税化と一体化されて進んでおり、社会保障の質的変化(権利から自助・互助・共助へ)、社会保障の重点化と効率化、などとも不可分な関係にあります。「国にはお金がないから」という議論からスタートすると、何が必要かという議論は二の次となり、展望が開けません。数々の固定概念の枠を超えて、財源の確保、財源の配分、社会保障の本来の在り方を考えなければ、国民と医療側の「持続可能性」がなくなる時期に来ています。