参議院選挙が終わって、様々な分析や感慨をお持ちの方も少なくないと思いますが、立場が違うとその分析も正反対になるようで、安倍首相は「力強い信任をいただいた」とか「国民の審判は下った」と改憲論議を促す発言を繰り返しているようです。
自民党は10議席を減らし、投票率は48.8%と低調、改憲に必要な3分の2議席を割っていることを考えると、首相はそう言うだろうとは思うものの、ホントにそうなのかというのが実態でしょう。現実に選挙後の世論調査でも安倍首相に一番望む政策は社会保障38%、改憲は3%で、安倍首相が進める政策には不安の方が大きいと答えている人が多数となっています。
安倍政権の掲げた選挙政策では、目先の「経済成長」を針小棒大に訴え、かろうじて内需とGDPを維持しているものの、実質賃金は下がり、非正規雇用が増え、中間層が細り、相対的貧困層と格差が拡大する、年金不安も広がり少子高齢化は進む、そして財政赤字は続き、異次元緩和の副作用リスクは拡大するという状況になっています。つまり、わずかばかりの経済成長の恩恵を一部の人たちだけで分かち合いながら、国や社会としてとんでもないリスクを抱え込んでいるのがアベノミクスの実態ですが、投票に行かなかった有権者が何故これほどに多いのか、そこに大きな問題が存在すると感じた人も少なくないと思います。
最近は、豊かさの実感はないが格差は仕方がない、格差の拡大や貧困は政治の問題ではなく自己責任と思う人、格差を容認する人が貧困層でも増えており、そうした人たちの中にも自民支持は少なくないのだそうです。雇用・社会保障への将来不安の高まりを背景に「改革」を求める人が増えた。そんな人々の不安心情に照準を合わせるように、「新しい時代への改革を前に推し進めるのか、再びあの混迷の時代に逆戻りするのか」などとあいまいな訴えを安倍首相から繰り返し聞いて、不安な国民は少子高齢化や巨額の財政赤字、異次元緩和の出口が見えないことなど忘れたように、なんとなく現状を追認し、景気が好調であって欲しい、だからこのままと自民党に、と引き寄せられてゆくのでしょう。
不都合な真実に蓋をし、国民に本当の期待を語れずに、国民の不安に乗じるだけの政治は早急にやめさせねばなりませんが、その為には一人一人が政治に参加することが社会を変え、社会を豊かにする、民主主義を発展させるというまともな考えを国民に取り戻すことが、今の日本の大きな課題になっていることを改めて示した選挙であったような気がします。わが法人の職員育成にも通じる教訓として受け止めたいと思います。