世界的な気候危機のなか、猛暑の8月をいかがお過ごしでしょうか。8月6日、9日の原 爆忌、そして8月 15 日の終戦の日を迎えて、今新たな戦前に進もうとしている我が国の状 況に思いをはせる方が多かったのではないでしょうか。
戦争は直接自身や相手が生命を奪い合う行為であり、従軍した兵士、戦禍を受けながら生 き残った一般市民に、年余にわたる心の傷を残します。PTSD(心的外傷後ストレス障害) と呼ばれる病態ですが、古くは第 1 次世界大戦時に「戦争神経症」として報告されていまし た。旧日本軍でも PTSD を発症する兵士が多発しましたが、帝国陸海軍はその存在を隠し 通そうとし、終戦後帰還兵とその家族を苦しめることになります。詳しくは「PTSD の日本 兵家族会・寄り添う市民の会」の HP をご覧ください。
PTSD という診断カテゴリが登場したのは 1970 年代です。ベトナム戦争から帰還した兵 士に多発する不眠やうつ、依存症、家族への DV、高い自殺率などが問題となり、彼らへの 補償の意味合いもあって疾患概念が提唱されました。ただ診断はトラウマとなる体験から 半年以内に症状が出現した場合に限定されています。実際は半年以内ではなく、何年もたっ てから発症する PTSD が報告されています。
東日本大震災と福島第 1 原発事故から 13 年経ちます。元青森民医連の蟻塚亮二医師は 2013 年から、福島県相馬市の「メンタルクリニックなごみ」で精神科の診療を行っていま す。蟻塚医師は震災前年まで勤務していた沖縄民医連の病院で、過酷な体験がフラッシュバ ックするなど「奇妙な不眠」に悩む高齢者に立て続けに会っていました。原因は 60 年以上 前の沖縄戦でした。そして福島でも同様な症状の患者さんが多く見られています。震災や原 発事故が直接の原因や引き金となるほか、仕事を引退して時間ができた時、日常のふとした 体験をきっかけに PTSD を発症します。
福島と沖縄、どちらも国策により命とくらしが脅かされた地域です。自公政権は沖縄の 島々を再び「捨て石」にすべくミサイル要塞化を進め、原発再稼働、福島原発事故の汚染水 海洋投棄を続けています。今後命を長らえても長期間の PTSD に苦しむ人が生じる国にし てはならないと考えます。紹介した蟻塚医師らの活動は、現在全国で公開中のドキュメンタ リー映画「生きて、生きて、生きろ」で観ることができます。ここ鶴見でも上映会を開けれ ばと思います。ご協力いただければ幸いです、よろしくお願いいたします。