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2024年9月 理事長挨拶

2024.9.01

これまでも理事会挨拶において、政府の進める「現行の健康保険証を廃止し、個人番号カ ードと健康保険証を一体化する方針」について批判的に論評してまいりました。いよいよ本 年 12 月 2 日、現行の健康保険証の新規発行を終了させようとする時期が迫っています。今 回もなぜ政府が、大多数の国民の反対を一顧だにせず、こうした愚策に固執するのかについ て考察してまいります。

警察庁は9月 12 日、運転免許証と個人番号カードを一体化した「個人番号免許証」の運 用を来年3月 24 日に開始する方針を決めました。 切り替えは任意で、従来の免許証は引 き続き利用できます。なぜ、個人番号保険証だけ、紙の保険証と併用できないのでしょう か?

この答えにつながると思われる、興味深い発言があります。経済同友会の新浪剛史代表幹 事は 2023 年 6 月 28 日、2024 年末の保険証廃止の問題で、廃止時期を「納期」だとして 「納期を守るのは日本の大変重要な文化」と発言しました。政権与党の大スポンサーである 経済界から、至上命令が下ったのです。

かねてより、個人番号事業を進めてきた政権党と、受注企業の癒着が明らかになっていま す。個人番号カードの関連事業で巨額発注を受けた大企業5社が、自民党の政治資金団体 「国民政治協会」に 2013~21 年の9年間に合計7億円を献金していました(「しんぶん赤 旗」調べ、同紙は自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く 政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーンで本年の JCJ「日本ジャーナリスト協会」 大賞を受賞しています)。個人番号制度を強力に推進したのは財界です。個人情報をビジネ スに利用するため、その道具として、健康保険証や介護保険証、年金手帳を兼ねた「社会保 障個人カード」の導入を求めるなどしてきました。財界が要望し、その加盟企業が自民党に 巨額献金し、事業規模1兆円ともいわれる巨額事業を官僚が天下りした企業が受注する… マイナンバー制度を巡る政官財癒着の構図が背景にあります。

財界が特に狙っているのが国民の健康情報であることは明らかです。岸田前政権が個人 番号の利用範囲を省令で広げられるように法改定を行っているため、個人番号カードと保 険証を一体化することで、私たちの服薬状況・検査データ等を政府経由で合法的に企業グル ープに提供することが可能になっています。

先に述べた新浪氏が社長を務めるサントリーホールディングスの子会社であるサントリ ーウエルネスは健康食品事業を担っており、こうした情報を得ることで儲けをさらに増や すことになるでしょう。健康保険証に紐づけられる情報は、運転免許証から得られるそれに 比して、大きなビジネスチャンスになることは明らかです。こうした点からも、現行の保険 証を使い続けられることを皆さんにお勧めする次第です。